キャッシュフロー計算書 投資に役立てる方法 初心者向けの解説
株式投資の入門の決算書の記事で、3つの財務諸表の解説をさせて頂きました。
でも、キャッシュフロー計算書は現金の流れを表しています、と言われても、
それが何を意味するの?
それを株式投資にどのように活かせばいいの?
分からないですよね。
今日は10分間で理解できる、キャッシュフロー・ステートメントの意味することと、株式投資での活かし方をご説明します。
キャッシュフローによって、企業の状況を把握できれば、株を買うか売るかの判断材料に使う事が出来ます。
キャッシュフロー計算書から分かる事
殆どの企業には人間と同じように寿命(ライフサイクル)があります。
10年で倒産してします企業や、同じことをやっていて、永続してる企業、業態を変えて100年以上続いてる企業などあります。
競合他社の出現、新しいテクノロジーの出現、需要の変化などによって、どんなに斬新な商品やサービスもいつかは古くなります。
企業のキャシュフロー(現金の流れ)を見れば、その企業がライフサイクルのどのステージに居るのかを理解することが出来ます。
企業のステージとは
① 投資時期
投資をして会社(工場など)を作る
↓
② 安定期
売上は右肩上がりで、業績が安定する
↓
③ 停滞期
競合他社の出現で、売上が横ばいになり、業績が停滞する
↓
④ 低迷期
需給バランスが崩れ、業績が低迷する
↓
⑤ 後退期
売上が下がって、赤字になり、業績が後退する
↓
⑥ 終了時期
会社が倒産し、終了する。
3つのキャッシュフロー
キャッシュ(現金)の流れは3つあります。
営業キャッシュ・フロー
会社の売上から入ってくる現金のことを言います。
売上を上げても現金が流出している状態の、営業キャシュフローがマイナスと言うのは良くありません。
投資キャッシュ・フロー
会社の投資活動に使う現金のことを言います。
将来のための投資に使うお金ですから、投資キャッシュフローがマイナスなのは悪いことではありません。
反対に投資キャッシュフローがプラスの場合、会社が設備や土地などを何かの目的で売却して、現金が会社に入ってきています。
財務キャッシュ・フロー
会社の資金調達や借り入れの返済の現金のことを言います。
会社の状況によって銀行から借り入れたり、返済したりするので、プラスが良いのかマイナスが良いのかは状況によります。
-ここがポイント-
キャッシュフローがプラス(+)の時はお金が会社に入って来た事を言います。
キャッシュフローがマイナス(-)の時はお金が会社から出て行った事を言います。
フリー・キャシュフロー
普通の会社は、営業キャシュフローと投資キャッシュフローを合わせた額がプラスになります。なぜなら、稼いだ現金の範囲ないで、投資をしているからです。
年間800万円しか現金が入ってこないケーキ屋さんが、毎年2,000万円も設備投資に使ってるのはおかしいですよね。
店舗拡大で一時的にフリー・キャシュフローがマイナスになるのは分かりますが、連続でマイナスが続いてる場合は注意が必要です。
各ステージのキャシュフロー
*横軸が営業CF、縦軸が投資CF
企業の6つのステージによって、営業キャシュフローと投資キャッシュフローが上記のようになります。
それでは6つのそれぞれのステージの特徴を見ていきましょう。
①投資時期
会社が作られて間もないころは、商品が徐々に売れて、その売上金の中から現金が流れ込んできます。
営業キャッシフローがプラスの状態です。
その一方で若い会社は、将来の業績拡大のために、設備投資をどんどん行い、その支払いのために、会社から多くの現金が出てきます。
投資キャッシュフローがマイナスの状態です。
創業間もないころは、お金が足りないので銀行からお金を借りて、借りた現金が入ってきています。
財務キャシュフローはプラスの状態です。
②安定期
会社の業績が徐々に右肩上がりに伸びて、商品がどんどん売れて、売上によって多くの現金が流れ込んできます。
営業キャッシフローがプラスの状態です。
会社は過去に積極的に投資をしているので、この時期になると設備投資は、徐々に少なくなり、投資に使う現金の支払いは以前よりは少なくなります。
投資キャッシュフローがマイナスの状態です。
売上が伸びて資金に余裕があるので、銀行への返済をしていて、現金が出ています。
財務キャッシュフローがマイナスの状態です。
③停滞期
競合他社の出現などで、売上の伸びが鈍化してきます。それでも売上は維持できているので、会社に現金は流れ込んできます。
営業キャッシフローがプラスの状態です。
会社の経営判断としては、競合他社も同じような商品を生産して販売しているので、設備投資は必要ありません。
これまで持っていた設備を売却して、生産量の調整を始めます。
設備を売却した際の現金が会社に流れ込んできます。
投資キャッシュフローがプラスの状態です。
売上が減って、投資も減らしていますが、銀行への返済は続けていて、返済のための現金が出ています。
財務キャッシュフローがマイナスの状態です。
④低迷期
競合他社との安売り合戦が続き、売上も利益率も下がって、仕入れた材料や商品が売れ残って、支払いの現金の方が売上で稼ぐ現金より多くなってしまって、現金が会社から流出し始めます。
営業キャッシフローがマイナスの状態です。
この時期になると、営業で現金を稼げてないので、何とか会社の現金を確保するために、設備や土地などを売却し始めます。
投資キャッシュフローがプラスの状態です。
売上からの現金が入って来なくなって、現金を確保するために資産を売却しています。
余裕があれば銀行への返済をしていますし、余裕が無ければ銀行から借り入れをしているかも知れません。
財務キャッシュフローはプラスかマイナスの状態です。
*実際の例(大塚家具)
下記は大塚家具の2015年から2018年までのキャッシュフロー・マトリックスです。
*横軸が営業CF、縦軸が投資CF
売上が不振で、営業キャッシュフローがマイナスになり、それを補うために資産を売却し、投資キャッシュフローがプラスになっています。
典型的な低迷期の事例だと思います。
⑤後退期
更に売り上げが下がって、売上も利益率も下がって、現金が会社からもっと流出し始めます。
営業キャッシフローが大きくマイナスの状態です。
この時期になると、売上からの現金が入って来なくなって、会社の現金を確保するために、設備や土地をしようと考えますが、もう売るものがあまり残っていません。
投資キャッシュフローが少しプラスの状態です。
余裕があれば銀行への返済をしていますし、余裕が無ければ銀行から借り入れをしているかも知れませんが、この段階になると、銀行も貸してくれるか不明です。
財務キャッシュフローはプラスかマイナスの状態です。
⑦ 終了時期
最後には売り上げも無くなって、大きく赤字になり、現金が出ていくだけになります。
営業キャッシフローが大きくマイナスの状態です。
既に資産は売却済みなので、もう換金のために売るものがありません。
銀行からの借り入れや投資家からの資金を集めることが出来なければ、倒産です。
*例外(ベンチャー企業の場合)
ベンチャー企業で、これから市場のシェアを取ってから利益を出そうとしているような企業の場合は、シェア拡大のために多くの費用を使ったり、赤字覚悟でサービスを提供し、設備も強化している場合があります。
こうのような会社は、営業キャッシュフローはマイナスで、投資キャシュフローもマイナスの場合があります。終了時期(倒産時)と同じようなキャッシュフローになっています。
このような場合、いつまで経っても現金の流出が続く場合、倒産してしまいます。
キャッシュフロー計算書の投資への活かし方
成長株(グロース株)投資の場合は、①投資時期から②安定期に入るステージで投資したいですね。
配当重視(インカムゲイン)株に投資する場合は、②安定期から③停滞期のステージで投資をするのではないでしょうか。
財務諸表を見る際に、真っ先に利益は幾らなの?と損益計算書(P/L)を見たり、借入金や純資産は幾らなの?と貸借対照表(B/S)を気にして見ます。
でも数年分のキャッシュフローステートメント(C/F)を確認することによって、企業がどのステージに差し掛かっているかを見ることが出来ます。
投資先の企業がどの辺のステージにいるかを見極めて、株を買うか、売るかの判断に役立てることが出来ると思います。
数年分と書いたのは四半期や1年分だけを見ても、流れがつかめないからです。数年単位での状況を判断する必要があります。
-ここがポイント-
粉飾決算や黒字倒産を見極める アクルーアル
損益計算書上では、費用を費用を分散させたり、先送りさせて、利益を作ることが出来てしまいます。
特に上場企業のサラリーマン社長や役員だと、自分の任期中には業績を良く見せたいと言う気持ちが働くはずです。
そのため利益が多く出ていても、会社から現金が急速に減っていると言う事があります。
これは粉飾決算をしているからです。
現金(キャッシュ)は銀行の残高にはっきり出ているので、ごまかす事が出来ません。
純利益と営業キャッシュフローの差を、アクルーアルと言います。
計算式:純利益‐営業キャッシュフロー
指標の意味:純利益と営業キャッシュフローの差
アクルーアルが
プラス:資金回収が悪い
マイナス:資金回収が良い
*この記事を書くにあたって参考にした書籍は次の通りです。
非常に分かりやすく書かれた本で、おススメです。
- 作者: 山口揚平
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2008/10/09
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「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本
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