ネットイース(NetEase)決算 中国ゲーム2位、越境EC1位のナスダックに上場の中国企業
中国のIT企業と言うとBAT(百度、アリババ、テンセント)が有名です。
BAT以外の中国ネット企業は、荒野行動などのゲームで有名なネットイースですが、最近ネットイースはゲーム以外の事業も成長しています。
特に最近際立っているのが、越境ECでシェアナンバーワンと言う事です。
私は中国に住んでいてITサービスを良く使っていますが、ネットイースのサービスは殆ど使ったことが無く、ゲームもしないので、どんな企業なのか全く知りませんでした。
今日はネットイースについて調べてまとめてみます。
ネットイース(網易 NetEase)とは
ネットイースは1997年に設立され、中国のポータルサイト、ブログ、メールサービス、ゲーム、中国の越境ECでナンバーワンの網易考拉(ネットイースコアラ)、同じくECサイトの網易厳選(Yanxuan)、音楽・教育・ビデオのストリーミング配信サービスなどを行う巨大IT企業です。
陰陽師・荒野行動・Identity Vと言うスマホゲームが有名で、海外のユーザーも多くいます。
中国は2015年に世界最大のモバイルゲーム市場になっています。中国のゲームサービスのナンバーワン企業はテンセント、ネットイースはナンバー2です。
ネットイースのポータルサイトのURLは
越境ECのURLは
中国には網易(ネットイース)の他に、騰訊(テンセント)、搜狐(ソウフ)、新浪(シナ)の3つのサイトがあり、これら4つを4大ポータルサイトと読んでいます。
中国語企業名:網易
企業名:NetEase
設立:1997年
本社:中国広州市
上場市場:ナスダック
上場年月:2000年7月
公募価格:15.50米ドル
ティッカーコード:NTES
直近の決算:2018年通期決算内容
それではネットイースの2018年度の決算内容を事業別に見ていきたいと思います。
売上
2018年の売上は671億5,650万人民元(約976億米ドル)で24.1%増収、2017年の売上は541億1,020万人民元でした。
事業別売上
■ゲーム
オンラインゲームの売上は401億9,010万人民元(約58.5億米ドル)でした。2017年は362億8,160人民元でした。(前年比約10%増収)
2018年のオンラインゲームの売上の71%がモバイルから発生しています。
2017年のモバイル比率は70.08%でした。
私はゲームのことは全く分からないのですが、ネットイースの荒野行動とオンラインゲームが日本でも流行ってるみたいですね。
■EC事業
EC事業の売上は192億3,550億人民元(約27億米ドル)で、2017年は116億7,040万人民元でした。(前年比約64%増収)
■広告
広告事業の売上は25億80万人民元(約3億6,370万ドル)、2017年は24億88万人民元でした。(前年比約4%増収)広告のトップは自動車、不動産、インターネットサービスでした。
■イノベーション・ビジネス
イノベーション・ビジネスの売上は52億3,010万人民元(約7億6,070万米ドル)、2017年は37億4,110万人民元でした。(前年比約39%増収)
営業利益
営業利益は284億人民元(約41億ドル)、2017年は259億人民元でした。(前年比約9.6%増加)
営業利益は自社開発のモバイルゲーム Knives OutとChu Liu Xiang、PC用ゲームのJusticeが売上に貢献した為です。
またECサイトのネットイース・コアラ(Kaola)と網易厳選(Yanxuan)の事業が営業利益を押し上げました。
イノベーション・ビジネスの営業利益が減少したのは、音楽著作権のコストがたかくなったからです。
税引き後利益
税引き後利益は61億5,240人民元(8億9,480万米ドル)、2017年は107億790万人民元でした。(前年比42.5%減少)
2018年は1億1,330万人民元の為替ロスがありました。
2018年のEPSは6.87米ドル、2017年は11.74米ドルでした。
昨年より利益は減っています。
配当
2018年第4四半期の配当は0.48米ドル(権利堕ち日は2019年3月8日)
配当性向は25%。
自社株買い
2017年11月15日に、12ヶ月以内に10億ドルの自社株買いを行うことを発表。
また2018年6月11日に、20億ドルの自社株買いの発表。
これにより約11億ドル、240万株のADSの自社株を既に買いました。
2018年11月14日、12ヶ月以内に上限10億ドルの自社株買いを行うことを発表しました。
事業の変成
2018年の決算の事業別の売上から分かる通り、EC事業の売上が64%も増えてます。
2015年1月に始めたネットイース・コアラ(Kaola)と2016年4月に始めた網易厳選(Yanxuan)が2018年の売上に大きく貢献しました。
特にネットイース・コアラ(Kaola)は、越境ECのプラットフォームでアリババの天猫国際を抜いて、シェアトップです。
ネットイース・コアラ(Kaola)について
ネットイース・コアラとは
中国の消費者が海外の商品をネットと通じて購入できる越境ECプラットフォームです。
■2017年度越境ECシェア
ネットイース・コアラ:25.8%
天猫国際(アリババ):21.9%
京東全球網(JD):13.3%
唯品会:12.9%
小紅書:4.9%
洋馬頭:4.8%
その他:16.4%
中国のEC全般では1位のアリババが圧倒的なシェアを持っていて、2位が京東(JD)ですが、越境ECになると、1位はアリババのプラットフォームではなく、ネットイースのプラットフォームが1位です。
ネットイースのプラットフォームの何がシェアを1位にしているのかと言うと、海外メーカーの豊富さと本物だと言う信頼性のようです。
拡大を続ける中国越境ECの状況
中国で海外の正規販売の商品を買うには、百貨店などの正規販売店若しくは天猫などのメーカーのお店で買います。
中国国内に正規販売されてない商品を買う場合、アリババのタオバオなどで、第三者が勝手に輸入した商品や購入代行と言う代行者から商品を買います。
正規ルートで中国に入ってない商品を買う場合は、偽物のリスクがあります。
現状は、日本に住んでいる中国人や中国人旅行者が、日本の百貨店などで爆買いして、中国に商品を手荷物として持ち込んだり、国際宅配便で送付し、中国国内のECサイトで販売する代行購入と呼ばれる正規でない方法が乱立しています。
日本で言う転売ビジネスです。
中国政府はこのような正規でないビジネスを行う人が輸入関税や所得税を支払わない問題に目をつけました。
2019年1月1日から中国電子商務(EC)法が施行さされました。
この法律の目的は正規の輸入をさせて税金を支払わせる事と、模造品や偽物の商品の取締りです。
上海の空港でも全ての荷物を赤外線でチェックし、代行業者の荷物を監視し、関税を支払わせるようになっています。
代わりに化粧品などの関税は下げていて、正規ルートで輸入するように方向付けています。
また、中国国内で化粧品や食品などは中国語を表記したラベルを添付しなければ、中国国内販売出来ないようになっています。
このような正規品で無い商品の中国政府の取り締まりは、越境ECを後押しすることになります。
越境ECは正規の手続きを取っているからです。
消費者は越境ECサイトを使えば、正規の海外製の商品を中国から購入することが出来ます。
海外のメーカーも中国に進出しなくても、越境ECサイトで注文を受けて、自国から発送し、代金を受け取ることが出来きます。
2019年1月1日に施行された中国電子商務(EC)法によって、日本の百貨店の化粧品の代行買いの中国の顧客が減った影響を受けたようです。
代わりに日本のメーカーは正規ルート海外へ輸出若しくは越境ECの販売の増加が見込めると思います。
中国電子商務(EC)法は越境ECサイトにとっては追い風になり、越境ECの売上はこれからも伸びると思います。
最後に
中国には多くのIT企業があって、ベンチャー企業が次々に出てきます。
私はアリババとテンセント以外の中国のIT企業の株を買おうと考えたことはありません。
殆どの中国のIT企業はアリババかテンセントの資本が既に入っているからです。
ただ、知見を広めるためにも、ネットイースのような企業の決算も時々見ていきたいと思います。
2018年の減益を見ると、具体的な減益の理由は不明で、ネットイースは買えないなと思います。
チャート的にも良く分からない感じです。
ただし、先ほども書きましたように、越境ECの市場はまだまだ拡大すると思います。
今後もネットイースに注目していきたいと思います。
この記事はネットイースのFiscal Year 2018 Financial Resultsのデータを参考に書きました。また画像もネットイースのサイトより引用しています。
http://ir.netease.com/phoenix.zhtml?c=122303&p=irol-reportsannual